吉村 和真 [ Kazuma Yoshimura ]

迷い続ける若者たちに共感上杉達也と和也は双子の兄弟。何事にも真剣に取り組む努力家の弟・和也に対し、楽天家でいい加減な性格の兄・達也。2人の幼なじみの浅倉南には、二つの夢があった。高校野球で甲子園に連れて行ってもらうことと、好きな人のお嫁さんになることだ。
その夢をかなえるべく、南に思いを寄せる和也は1年生にしてエースで大活躍。だが夏の地方大会決勝戦当日、交通事故で世を去る。夢の実現は、弟から兄ヘバトン「タッチ」されることになる。
高校野球が舞台だが、従来のスポ根マンガとは異なる新境地を開いた。甲子園への道のりと、恋愛や友情を等価に扱うことで、男女の枠を越えた幅広い支持を得た。また、あだち充独特のテンポのよい笑いや登湯人物たちの恩盧深いセリフも、感動の奥行きを広げている。
無愛想な達也にはハラハラさせられた。もうマウンドに立つことがない和也を思い、南にも仲間にも素直になれない。甲子園出湯を決めた一球には、和也の魂が乗り移っていた。兄弟で南の夢を実現した形だが、その後何のために甲子園で投げるか悩む達也は、開会式を披け出し南に告白する。それまで2人は互いを思いつつはっきりさせずにいた。告白は、南のもう一つの夢に対する意思表示だった。
迷い続けることが青春の証しであることを、あだちは迷いなく描く。世代や性別を越えて読者の琴線にタッチし続ける本作は、80年代を代表する青春マンガである。
(京都国際マンガミュージアム研究統括室長 吉村和真)

81〜86年「週刊少年サンデー」連載。アニメと主題歌も大ヒットした。南が野球部のマネジャー兼新体操部員だったことから、「南ちゃん」がスポーツ美少女の代名詞になった。


朝日新聞記事(2009/08/13)より 無断転載禁止

トップページ コラム 「朝日新聞」「熱血マンガ学」 タッチ