表 智之 [ Tomoyuki Omote ]

コイツは強い…絵の迫力で納得幼少時から専門的なトレーニングで鍛え上げられ、高校生にして空手の世界大会を制した天才格闘家・範馬刃牙。彼には、ルール無用の非合法格闘大会のチャンピオンという裏の顔がある。目標はただ一つ。強くなって、父・勇次郎を倒すこと。超大国の軍隊に匹敵するパワーを持つとされる勇次郎は、刃牙に立ちはだかる壁であり、母を殺した仇でもあるのだ。
様式的な技の掛け合いだったプロレス興行が「真剣勝負」をうたう総合格闘技へと変化していった状況をふまえて登場した、新世代の格闘マンガである。古今東西、多彩な格闘技が登場しウンチクで楽しませてくれるが、魅力はそれだけにとどまらない。
長期連載の格闘マンガは、より強い敵を出し続けるため辻褄が合わなくなりやすい。強さを理屈で表現しようとすると、荒唐無稽にならざるを得ないのだ。だが本作は、理屈ではなく絵の迫力で力を感じさせる。グロテスクに盛り上がった筋肉、衝撃でねじ曲がる体、傷口からのぞく血管や神経の生々しさ・・・・・・。ここ一番の勝負も華麗な必殺技などで決するのではなく、肉をえぐり骨を割るような力ずくの潰しあいだ。
 少年向けにしては表現が激しすぎるようにも見えるが、それは、少年マンガの重要なモチーフである「強さ」を追求しつづけた結果でもある。過剰なまでのパワフルさをお家芸とする「週刊少年チャンピオン」の看板として、刃牙の激闘は今なお進行中だ。
(京都国際マンガミュージアム研究員 表智之)

板垣恵介作。91年から「週刊少年チャンピオン」に連載。99年から「バキ」、06年から「範馬刃牙」とタイトルを変えながら続く。オリジナルビデオやテレビアニメにもなった。


朝日新聞記事(2009/08/27)より 無断転載禁止

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