開催日時 | 2011.7.16 SAT |
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会場 | 京都国際マンガミュージアム 3階 研究室1 |
参加者数 | 70名 |
企画担当:ジャクリーヌ・ベルント 主催:京都精華大学国際マンガ研究センター/京都精華大学大学院マンガ研究科/科学研究費補助金(基盤研究(B)「女性MANGA研究:主体性表現の可能性とグローバル化 欧米/日本/アジア」研究チーム[代表:大城 房美(筑紫女学園大学教授)])
<発表者>
鈴木翠(京都精華大学大学院マンガ研究科修士課程2年)「腐女子の内部規範 外部との関係から現在のつながりへ」
報告資料[PDF:1,325KB]
アントニョノカ・オルガ(同)Bishōnen - the Four Elements(美少年論 その4つの中心的要素をめぐって)
報告資料[PDF:1,325KB]
千田真菜(同)「『うすっぺら』な女性キャラクターの存在意義 表現論からみるBLマンガ」
報告資料[PDF:1,383KB]
青木冬美(同)「マンガの『お約束』から外れる高野文子 『病気になったトモコさん』を例に」
報告資料[PDF:224KB]
戸田康太(同)「マンガの『メタ表現』をめぐって 西島大介『アトモスフィア』を手がかりに」
報告資料[PDF:374KB]
<コメンテーター>
長池一美 (大分大学国際教育研究センター准教授[精神分析学、ジェンダー・スタディーズ])
吉岡洋 (京都大学大学院文学研究科教授、京都精華大学大学院非常勤講師[美学・芸術学、メディア論])
石川優(大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員、大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程[マンガ同人誌研究])
研究会の総括:
マンガ研究科の理論系院生が取り組む研究テーマはさまざまではあるが、公開の中間報告会には共通項が望ましいという考慮から「女性マンガ」を本研究会の中心に据えた。この問題は、腐女子論やマンガ・ジャンル論から、特定のジャンルから外れる女性作家の考察に至るまで報告の過半数と何らかの接点があるだけでなく、今回のフロアーが豪華なメンバーからなるほど近年注目を浴びているテーマでもある。こうして、自らの問題設定を紹介した報告者は、資料の選択と把握に加え、方法論に関する指摘を数多く得ることができた。中でも、腐女子と同人誌との区別や、「内部規範」の社会学的定義が求められ、BLにおける美少年については、精神分析やクイア理論の知識を高めながら、「ペニス」よりも「ファルス」の存在を追求することがマンガ特有の記号性との関係から薦められた。また、BLマンガの「不可視」な女性キャラクターに当たって、「みられる者」の力やその「みる者」との具体的な関係、そしてこれをめぐる「約束」が照らし出された。BLなどの「約束」あるいはリテラシーから逸脱するマンガを如何に位置づけるかが論題になった際、特定の読者層にとっての「分かりやすさ」を近代文学や芸術映画にも見出し、また、多義性を主流マンガにも認める必要があり、多義的読みの可能性を必ずしも「作者性」に還元しないように主張された。つまり、記号論や文学研究、フィクションのポスト/モダン論を参照する重要性が見えてきたが、全報告については諸問題やその言説をめぐる歴史的意識を高めることも残された課題となった。
(文責:ジェクリーヌ・ベルント 2011.1.3)