講演会・研究会報告

開催日時 2015.7.19(SUN) 14:00-16:00
会場 多目的映像ホール
出演者 小林よしのり(マンガ家)/呉智英(評論家、「マンガと戦争展」監修)
参加者数 200名

主催:京都国際マンガミュージアム/京都精華大学国際マンガ研究センター 担当:伊藤遊

講演会・研究会要旨

「マンガと戦争展――6つの視角と3人の原画から」の関連イベントとして企画された本対談は、マンガに描き出されてきた戦争のイメージの幅広さを通じて、戦後日本における戦争をめぐる感受性のありかたを再構築するという「マンガと戦争」展のねらいに基づきながら、『新・ゴーマニズム宣言Special 戦争論』等によって「マンガによって戦争をどう語るか」をめぐる大きな議論を呼んだマンガ家・小林よしのり氏を招き、評論家・呉智英氏を聞き手として開催されたものである。

対談は「マンガ家としての小林よしのり」のキャリア、および作品の変遷を中心として進められた。デビュー当時の生活や編集者とのやりとりなど裏話の数々が飛び出すなかで、呉氏は「ゴーマニズム宣言」を、実際にマンガ作品が社会的な事件となり、社会を動かしたというマンガ史上でも重要な出来事として位置づけていた。「ゴーマニズム宣言」をめぐっては、オウム真理教事件との関わりから、賛否両論を巻き起こした『新・ゴーマニズム宣言Special 戦争論』の反響にまで話が及んだ。

対談の終盤において、戦後70周年を迎えるなかで、戦争をめぐるさまざまなことがわからなくなってきてしまっているという呉氏に同意しつつ、小林氏はさまざまな視点から戦争を描くこと自体の重要性と、マンガで戦争を描くことはその悲惨さを描き出すだけに留まらず、勇壮美や兵器知識などさまざまな側面も含みこまれうるのだということを強調していた。「戦争のなかではとんでもない不合理な言葉が出てくる。“どうすればよかったのか”というところまで含めて、そういうものを描いてみたい」――「リアリズム」という言葉を用いつつそう語る小林氏の試みは、近年の作品『卑怯者の島』のうちにも見出すことができるだろう。

(文責:雑賀忠宏2016.5.23)

講演会・研究会風景

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