講演会・研究会報告

開催日時 2016.8.17(SUN)14:00~15:30
会場 京都国際マンガミュージアム 1階 多目的映像ホール
出演者 江口寿史
参加者数 200名
主催 京都国際マンガミュージアム/京都精華大学国際マンガ研究センター

担当研究員:應矢泰紀

講演会・研究会要旨

「江口寿史展KING OF POP 京都編」の関連イベントとして企画された本イベントは、江口寿史氏に、自身のツイッターで話題となった「5分スケッチ」を中心に、人物の魅力ある描き方について語っていただいた。「5分スケッチ」は、クロッキーやデッサンとは目的が異なり、下描きなしでいかに現実の人物などを自分の描画スタイルに描き起こしていくかの訓練方法である。よって似顔絵のように似せて描くのが目的ではない。「5分」は当人自身が戒めを込めて定めた時間で実際にこの時間内に完成するのは難しいが、年々このスケッチからテクニックが開発され、素早く描けるようになったという。

 

ポイントはいかに少ない線に取捨選択して描くのかということだそうだ。輪郭線とは異なる凹凸によって作り出されるシワについては、線を増やすことで陥りやすい「不気味の谷」を回避することにもつながる。しかし江口氏は「鼻の穴」を躊躇いなく描く。本来省略したり、陰などでごまかし気味なところだが、江口氏はむしろ人間らしさを損なわない個性として、きちんと描くのだという。凛々しくも血が通う生きた人間らしさはこのような江口氏の姿勢からうまれるのかもしれない。

 

他にも頭や髪などの立体を張子のような面の集合体として描くことや、人物のポージングの考え方、人物のどこを基点として描き始めるか、立体的な線の見せ方など、多くを実演を踏まえて描画のテクニックが紹介が行われた。

 

現代では江戸時代の浮世絵師になぞられた「絵師」とよばれるイラストレーターが注目を集めているが、デフォルメする表現スタイルではなく、人間の特徴・個性を絵に反映させる修練として「5分スケッチ」を続ける江口スタイルは、絵の重みが違う。

(文責:應矢泰紀 2017.5.21)

講演会・研究会風景

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