開催日時 | 2009.12.18 FRI-20 SUN |
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会場 | 京都国際マンガミュージアム 1階 多目的映像ホール |
出演者 | ティエリ・グルンステン、トリナ・ロビンス ほか |
参加者数 | 第1日目=125名/2日目=160名/第3日目=125名 |
主催 | 京都国際マンガミュージアム |
企画担当: ジャクリーヌ・ベルント ★この会議を元にした論集のデータがこのページの下部でダウンロードできます。
今回の会議は、「国際マンガ研究はいかにして可能か」を共通の問題関心とした、国内最大規模のマンガ研究に関するカンファレンスとなった。欧米やアジアなど、海外8カ国と国内合わせて計24名の報告は、単なるその国や地域のマンガ/コミックス/バンドデシネ事情の紹介に留まらない、いずれも比較考察を常に意識した、文字通り国際的学究の営みであった。
各セッションでは、それぞれの地のマンガのシステムや歴史、メディアとしての形態・流通、作品の物語や絵柄の傾向と社会的背景との繋がりなど、マンガやその周辺に関わる諸用語・概念の定義すら共有されていない現況で、懸命に問題意識を接続しようとする姿勢が随所に見られた。それは私たちの目指す「国際マンガ研究」が本質的に「スタディ」ではなく「スタディーズ」を志向していることの表れであり、今後も白熱した議論が持続することを十分予測させるものであった。
グローバル化するマンガに対し、マンガ研究はいかにグローバル化しうるか。その問いに向けて、速度や歩幅は人によるだろうが、着実な一歩を踏み出した、記念すべき会議となったことはまちがいない。
◆ 論 集
この会議をもとにして作られた論集がダウンロードできます。
■ 世界のコミックスとコミックスの世界
序文――文化横断的コミックス研究をめざして
ジャクリーヌ・ベルント
第1部 マンガ/コミックス研究の検討
1 グローバル化時代における、国際的マンガ研究への挑戦
ティエリ・グルンステン/野田謙介 訳
2 コミックスの文化的認知と学術研究の関係について――基調講演へのコメントにかえて
森田直子
3 絵・言葉・コマ ――マンガとBD、コミックスの共通性と差異について
夏目房之介
4 「マンガ」という自明性――ガラパゴス島に棲む日本のマンガ言説
小田切 博
5 SF 研究からみたマンガ/コミックス研究――ジャンル、トランスメディア、トランスナショナリズム
鈴木 繁
6 グローバルな規模でコミックスを研究すること
パスカル・ルフェーブル/杉本章吾 訳
第2部 マンガ/コミックスにおける作者と読者
7 「マンガを描くこと」をマンガ家たちはいかに描いたのか――マンガ生産行為の真正性に関する言説としての「マンガ家マンガ」
雑賀忠宏
8 美学のフィールドワーク――コミックスの社会的正統性をめぐって
トーマス・ベッカー/雑賀忠宏 訳
10 反映/投影論から生産的フォーラムとしてのジャンルへ――ヤオイ考察からの提言
溝口彰子
13 理想的な現代女性を描く――李惠珍と『十三點漫畫』
黃少儀(ウェンディ・ウォン)/吉原ゆかり 訳
第3部 歴史的記憶のメディアとしてのマンガ/コミックス
14 シンガポールとマレーシアのコミック
チェンジュ・リム/中垣恒太郎 訳
15 戦場の彼方に位置づく戦争コミック――アンネ・フランクのコミックにおけるトランスナショナルな表象をめぐって
ケース・リベンス/竹内美帆 訳
16 「はだしのゲン」と「原爆文学」――原爆体験の再記憶化をめぐって
川口隆行
17 情動はいかに作動するか――「はだしのゲン」における視覚のポリティクス
加治屋健司
18 マンガ爆弾――「はだしのゲン」の行間
トマス・ラマール/大﨑晴美 訳
あとがき――「『はだしのゲン』のリメイク版を海外で刊行する」ことの意図と方法
吉村和真
Introduction:
Attempts at cross-cultural Comics Studies
Jaqueline BERNDT
PART I: Examining Manga/Comics Studies
1: Challenges to international Comics Studies in the context of globalization
Thierry GROENSTEEN
3: Pictotext and panels: Commonalities and differences in manga, comics, and BD
NATSUME Fusanosuke
4: Manga truisms: On the insularity of Japanese manga discourse
ODAGIRI Hiroshi
5: Manga/Comics Studies from the perspective of Science Fiction research: Genre, transmedia, and transnationalism
Shige (CJ) SUZUKI
6: Researching comics on a global scale
Pascal LEFÈVRE
PART II: Authorships and Readerships in Manga/Comics
7: How creators depict creating manga: Mangaka manga as authenticating discourse
SAIKA Tadahiro
8: Fieldwork in aesthetics: On comics’ social legitimaticy
Thomas BECKER
9: Dōjinshi research as a site of opportunity for Manga Studies
Nele NOPPE
10: Theorizing the Comics/Manga genre as a productive forum: Yaoi and beyond
MIZOGUCHI Akiko
11: When a ‘male‘ reads shōjo manga
ITŌ Kimio
12: BD in young girl-oriented magazines in France
INOMATA Noriko
13: Drawing the ideal modern woman: Ms. Lee Wai-Chung and her Ms. 13-Dot
Wendy WONG
PART III: Manga/Comics as Media of Historical Memory
14: Lest we forget: The importance of history in Singapore and Malaysia Comics Studies
LIM Cheng Tju
15: War comics beyond the battlefield: Anne Frank’s transnational representation in sequential art
Kees RIBBENS
16: Barefoot Gen and ‘A-bomb literature’: Re-recollecting the nuclear experience
KAWAGUCHI Takayuki
17: How emotions work: The politics of vision in Nakazawa Keiji’s Barefoot Gen
KAJIYA Kenji
18: Manga Bomb: Between the lines of Barefoot Gen
Thomas LAMARRE
Afterword:
Intentions and methods behind my proposal for remakes of Barefoot Gen abroad
YOSHIMURA Kazuma
【第2日目 2009.12.19】
<セッション1:少女マンガ、女性コミックス~ジェンダーとジャンルをめぐって>
トリナ・ロビンス「パツィ・ウォーカーからプリンセス・アイに至るまで:ガールズ・コミックスと少女マンガの普遍性を巡って」
溝口彰子「反映/投影論から生産的フォーラムとしてのジャンルへ:ヤオイ考察からの提言」
ウェンディ・ウォン「モダンな女性の理想像 李惠珍の漫画『十三点』(十三點)を中心に」
伊藤公雄「『男』が『少女マンガ』を読むということ」
大城房美(司会)
<セッション2:グローバル化における越境とマンガ研究>
パスカル・ルフェーブル「われわれは家族!グローバルな規模でコミックスを研究すること」
夏目房之介「マンガ、BD、コミックを語りあうための共通言語の試み」
小田切博「ガラパゴス島に棲む日本のマンガ言説」
クリスティーナ・プラカ
ジャクリーヌ・ベルント(司会)
【第3日目 2009.12.20】
<セッション3:マンガと社会>
チェンジュ・リム「生活の鏡、時代の産物 シンガポールとマレーシアにおけるコミックスと歴史の関係をめぐって」
トーマス・ベッカー「感性のフィールドワーク:コミックスの社会的正統性をめぐって」
山中千恵「マンガ体験をいかにとらえるか:台湾でのマンガ読者調査を事例として」
雑賀忠宏(司会)
<ワークショップ4:公的記憶、私的消費 『はだしのゲン』を出発点に>
ケース・リベンス「戦場の彼方に位置づくコミックス その第2次世界大戦のトランスナショナルな描写をめぐって」
トマス・ラマール「『チャイルド・ボム』:いかにして、マンガは子供時代に『原爆性』を付与するのか」
川口隆行「『はだしのゲン』と『原爆文学』 原爆体験の再記憶化をめぐって」
加治屋健司「『はだしのゲン』の画家たち イメージのパフォーマティヴィティを考える」
福間良明(司会)
<総合討論>
ジャクリーヌ・ベルント(司会)
◆ レポート
ジャクリーヌ・ベルント(本会議企画担当)による会議レポートはこちら